設計士が伝えたい、熊本地震で分かった直下率と壁量バランスから考えた耐震性

熊本地震の衝撃

2016年6月に起きた熊本地震はご存知だと思います。今現在も避難所で生活されている方が大勢おられます。自分の家が倒壊してしまい、命を落とされた方もいらっしゃいます。

今回の地震のように短期間で2回の震度7が起きた場合、1回目の揺れには耐えれた建物も2回目の揺れでは、支えきれずに倒壊してしまった建物が多くありました。さらには、2000年に改訂された新建築基準の住宅でさえ倒壊した建物がありました。中には、耐震等級2の基準を取った長期優良住宅も倒壊してしまいました。

今回は熊本地震を教訓に、現在の建築業界で議論されている最新の耐震性と、今後起こりうる地震で悲惨な目に合わないように住宅を建てる際の住宅の耐震性能についてお話しします。

木造住宅の必要壁量

下の表は36坪の家を建てる際にどれだけの壁の量が必要かを示した資料です。建築業界では、この指標が建築基準として定められており、建築される家は最低でもこの基準(耐震等級1)を上回るように構造がプラニングされます。
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在来工法 柱で家を建てる工法。建築基準法の最低ラインである耐震等級1をクリアするためには、1階で19.8m以上、2階で12.6m以上の壁量が必要。
2×4工法 壁で家を建てる工法で当社が採用している工法。同じく耐震等級1をクリアするためには、1階で30m、2階で25.2mの壁量が必要。それにより在来工法の1.5倍~2倍の強度がある。

2×4工法のほうが高い壁量が求められていることが分かると思います。

在来と2×4工法で異なる積雪への基準

上の表を見る上で、注意したいポイントがあります。

それは、積雪1.5mの地域で建てる場合を想定した数値です。2×4工法は、国から厳しい基準を設けられており、積雪1.5m分の荷重をかけた上で耐震等級をクリアしなければいけません。

それに比べて在来工法は、積雪を想定した基準で計算するように設けられておりませんので、資料の数値は積雪を想定せず計算された数値です。建築会社によっては正しく荷重をかけている会社と掛けていない会社が存在しています。あくまで各会社のモラルによって壁量を定めていることになります。

そして、耐震強度を表す壁倍率では同じ耐震等級1でも2×4工法の方が1.5~2倍強いことが実証されています。このような観点からも、北陸地方を中心に展開するオスカーホームは2×4工法で全ての家が建てられています。

熊本地震で分かった壁量よりも大事な「直下率」という数値

今回の熊本地震を、建築の専門家の方が調査していくと今まであまり問題視されていなかった「直下率」の数値が建物の耐震性に大きく影響することが分かってきました。

さらに衝撃的だったのが、2000年基準の1.25倍の強度を持つ絶対に倒壊しないと思われていた耐震等級2の住宅が倒壊していたことです。幸いにも在宅していなかったため最悪のことは起きませんでしたが、人命を守るために定められている建築基準法の根底を揺るがす事例になっております。

この事例への業界の注目度は高く、住宅専門誌の「日経ホームビルダー」がなぜ倒壊に至ったかの原因を究明するため、倒壊した住宅の図面の分析を木造住宅の専門家に依頼しました。その結果、「直下率」の低さが有力な原因の一つではないかと思われるという見解が出されています。

直下率とは

1階と2階がつながっている柱や耐力壁の割合のことで、構造的なバランスを評価する重要な指標として使われています。

今回倒壊した住宅の壁量は耐震等級2の必要量を満たしていましたが、柱の直下率が47.5%(適正直下率60%以上)、耐力壁が17.8%(適正直下率50%以上)で、特に耐力壁の直下率が小さいプランとなっていました。

強い家づくりのためには「直下率と壁量のバランス」が大事

 

では、直下率と壁量の数値がとても大事であることを図で説明しましょう。
1階のLDKを想定以上に広くした間取りでは、住宅の2階の壁を支える壁が1階に少ないために、いわゆる壁量不足となり、さらに「直下率」が低いため、熊本地震のように短期間で複数回の震度7が起きた場合、1回目の揺れには耐えれても、2回目の揺れでは支えきれずに倒壊してしまう可能性があります。

その点、元々面で支える構造になっている2×4工法では、「直下率」を考慮した設計が成されており、大きな揺れが来たときに破壊されやすい「筋交い」などを採用していないため、【地震に強い住宅】であると言えます。

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こういった内容をみますと住宅建築には建物強度を高いレベルにしておくことは当然で、さらにバランスが良く正しい設計がなされていることがとても重要になります。

オスカーホームでは今年から耐震等級3を標準化。最近の施工物件の耐力壁直下率の平均値は60.4%という結果が出ています。

3色紙の話

地震が発生すると、応急危険度判定士が各家を調査し、このような貼紙を貼ります。

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赤紙は既に建物として危険であり立ち入ることも禁止。緑紙(青紙)はそのまま使用できる安全な建物に張られます。
最も注意しなければいけないのは黄色紙で、見た目は問題なくても柱や基礎が壊れており、次の余震で倒壊する恐れがあります。

建築基準法の基準である【耐震等級1】の定義は、「大規模な地震が起こっても、即時倒壊しないレベルの住宅」と定められていますが、これは言い換えると「住んでいる人の命を守ることは出来ても、住宅においては地震の後には引き続き住むことが出来ない住宅レベル」ということになります。

知っておきたい耐震等級の意味

耐震等級1 即時倒壊しないレベル 現在の建築基準法の最低基準、余震で倒壊する可能性がある。
耐震等級2 地震後も住み続けられるレベル 長期優良住宅認定基準。病院や学校などの避難拠点と同じレベル
耐震等級3 耐震等級2より1.25倍強い 警察署や消防署などの防災拠点と同じ最高等級レベル
※オスカーホームの家の標準(2016年から)

北陸は安全?! 熊本地震のデータから考えてみる

私たちが住んでいる北陸の地震の確率は7%~8%です。先日、地震が発生した熊本県の確率は8%とほぼ変わらない数値でした。近隣の大分県や宮崎県は50%近くありましたが、実際は熊本県にて発生しました。このデータからも北陸でいつ地震が発生しても不思議でないことが分かります。

さらに今回の地震では新たに熊本県沖に活断層が発見されました。北陸でもまだ発見されていない活断層が存在する可能性は十分にあります。「これまで大きな地震が来たことがない」や「発生確率が低い、活断層がない」などの経験・データは、今後大地震が来ないと保証できるものではないとご理解いただきたいです。

オスカーホームと耐震性。これから家づくりを進める方へ

前述いたしましたが、オスカーホームでは、地震で命は守られても地震後に住む住宅に多大な修理費が掛かることや住宅の2重ローン状態になることをどうしても防ぐ必要があると考えて、最高等級の「耐震等級3を標準」としています。また最近の施工物件30邸の耐力壁直下率の平均値は60.4%です。

耐震性能など命に係わるかも知れないことをオプションで選んでいただくというようなことは決してしたくないと考えております。

大きな地震が発生しないとその怖さが分からないというのは、非常に危険です。熊本県であれだけ大きな地震が起こったにも拘らず、いまだに広い開口やリビング、デザイン性やローコストをアピールされているのでしたら、耐震等級や構造計算のことをきちんと説明できるどうかを確かめることをおすすめします。

住宅のプロであるなら、資産として残せる家、ご家族の命をしっかりと守ってくれる家を提供して当然だと思います。我々は、そういう家づくりをしていますし、その考えをご理解頂けるお客様に家を提供したいと思っております。

今なら選択できますが、建ててからでは後戻りできません。デザインや間取りは、最も重要な耐震性能を確保してから考えても遅くはありません。まずは、地震がきても安心できる家を考えてみませんか?

お問い合わせはこちらから 「どんな家がいいんだろう」「何から始めればいいの?」「見積もりをお願いしたい」「とにかくまずは見てみたい」に、私たちがお答えします。お気軽にご連絡ください。TEL 076-422-8489(平日:10:00~19:00)

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